自著を語る―――
「五輪などの国際舞台で活躍する選手に刺激を受け、国民の多くがスポーツに汗を流す。子どもたちは部活動などで練習に励み、トップレベルの選手に育っていく。そうした好循環を生み出したい」
スポーツ庁の発足を受け、ある新聞に掲載された社説の一節だ。目指すのは「一億総スポーツ社会」の実現か。とすればスポーツは国民の権利ではなく、義務になってしまう。そもそもスポーツへの関わり方は人それぞれで、みんながトップを目指す必要もない。
スポーツメディアは「明るい話題」を提供することが求められている。
だが、目を凝らせば、「好循環」の陰で我慢や忍耐を強いられる子どもたちがいる。指導者や上級生らによる暴力は相も変わらずで、熱中症や脳しんとうなど避けられたはずの事故も一向になくならない。
影に向き合ったこの本に「明るい話題」はほとんどない。子どもたちの未来を輝くものにするためのメッセージとして受け取ってもらえたらうれしい。